ベルギー旅:ベルギー王立美術館
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ベルギーと言えばフランドル絵画。
15世紀、油彩技術が発達したフランドル地方では、細密描写による写実的な絵画が多数描かれます。
最高傑作のひとつ、ファン・アイク兄弟によるゲントの聖バーフ大聖堂の祭壇画。
オランダに行くと決めた時、絶対見たいと思っていた絵でした。
が、しかしー、去年の秋から修復中・・・(涙)
次、いつ見れるか分からないのだそうです。生きているうちに修復が終わりますように・・・

で、それが見れないならここへ!と思っていたのがこのベルギー王立美術館。
ここでフランドル絵画に浸るのだ!と鼻息荒く行ってきました。


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ここで絶対に見たかった絵のひとつ、クエンティン・マセイスの『聖母子』。
マセイスはアントワープで活躍した画家で、北イタリアにも旅したことがあり、イタリアルネサンスとフランドル絵画の伝統を融合させた絵画を描きました。
これは1947年の絵なので、まだその融合が見られる前の絵です。


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この宝石の質感。超細密描写。
マリアの細く輝く金色の髪・・・
背景の美しく繊細な装飾。
もー、何もかもが美しくて、絵の前で悶絶しました。






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他にもヒエロニムス・ボスの『聖アントニオの誘惑』や、ロベール・カンパンの『受胎告知』、ディルク・ボウツの『皇帝オットーの裁判』等等、素晴らしい絵がたくさんあるのですが、興奮しすぎて全然写真を撮ってません。
ボスの絵なんて、細かいところを写真撮れば良かったなーって後悔です。
そしたら後でじっくりたっぷり細部まで眺められたのに・・・

まぁ、そんなオタクな話は置いといて。
ここにはブリューゲルだけを集めた部屋があります。
さすが地元です。
しかも、人がほとんどいないという贅沢空間。日本に来たら考えられないことでしょう。

↑は、右から『イカロスの墜落』、『堕天使の墜落』、『鳥わなのある冬景色』、『ベツレヘムの人口調査』です。
全てピーテル・ブリューゲル(父)の作品。
反対側には息子のピーテル・ブリューゲルの絵が並んでいます。


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ブリューゲルと言えば農民の風俗を描いた絵が有名ですが、初期にはボスのような幻想的な絵も描いています。
そのひとつが『堕天使の墜落』(1956)。

大天使ルシフェールが神に反逆を起こし、それを大天使ミカエル率いる天使軍団が下し、ルシフェールらは地獄に落ちるという話。
真ん中で剣を振り上げているのが大天使ミカエル。
ミカエルや天使たちはフツーなんですけどね、化物たちが半端なく不気味。
どーしたらこんな絵が思いつくのか・・・
身体の一部がカエルっぽかったり、魚だったり、顔だけ牛だったり、、、


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で、こっちの真ん中でラッパを吹いているのがルシフェール。
地獄に落ちて化物になっているので、既に天使の面影は無い・・・
右側にはムール貝のお化けみたいのがいたり、下にひっくり返っている化物はお腹が割かれて見えてるし。
うぇー、って思うのですが、でもボスの絵と同じで飽きることなく眺めちゃうのです。
こんな化物がもし目の前に現れたら、絶対に気絶する。その後食べられようが何されようが、意識を失った方がマシだと思います。
そのくらい不気味で気持ち悪い絵です。でも好き。(笑)

解説によれば、この絵はボスの『快楽の園』からヒントを得ている部分があるとのこと。
そっくりな意匠があるのだそうです。
『快楽の園』はプラドですね~スペインもいつか行かねば。


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回廊真ん中から15~6世紀のコーナーを眺めると、ちょうどクラーナハ(父)の『ヴィーナスとキューピッド』と、右にクエンティンの息子ヤン・マセイスの『スザンナと長老達』が見えます。
どちらも当時、裸体画を描く格好の口実。

クラーナハって、ルターの肖像画を描くくらい仲良かったのにこうやって異教のテーマを描いたり祭壇画を受注したり、結構抜け目ない人だったんだなぁと思います。


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ベルギーが誇る巨匠と言えばルーベンス。
私の苦手なルーベンス。あのぶよぶよの裸体と大袈裟な構図が苦手なのです・・・
彼のための部屋ももちろんあります。
ルーベンスの絵はでかいので、この部屋は特別天井が高いです。

並んでいるのは右から『聖母マリアの戴冠』、『聖母被昇天』、『聖フランチェスコのいるピエタ』。
どれもこれも教会から注文された祭壇画です。
こんな大きな絵、よく描くなぁと思いますが、当時は工房制作が普通なので大半は弟子が描いています。

さすがルーベンスという感じのドラマティックな構図です。
ルーベンスはアントワープ出身ですが、父親がプロテスタントだったので子供の頃ドイツに亡命。
父親が亡くなったので母親と帰国しカトリックに改宗、宗教画の大家になり教会相手に大儲けするわけです。
宗教戦争で様々な人が人生を左右させられていたのだなぁ。


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こちらはルーベンスの弟子ヴァン・ダイクの肖像画コーナー。
弟子の中でぴか一だったヴァン・ダイクですが、ベルギーにいる限り、ナンバーワンにはなれない。
だからイギリスに渡ったのだ、と以前ぶらぶら美術博物館で中野京子先生がおっしゃっていました。
で、絵画後進国イギリスで肖像画家として大成するわけです。
まぁ、彼の肖像画は確かに美しい。
本物より少しは良く描いたのではないかと思ってしまう私。
セルライトたっぷりの裸婦を描かない分、弟子のヴァン・ダイクの方が好感持てます。
なかなかいい男だし。


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最初の15~6世紀コーナーで持ち時間の大半を使ってしまったため、それ以降は駆け足で鑑賞。
目玉の1つヨルダーンスもさらーっとさらーっと。
デルヴォーに至ってはフロアにすら辿りつけませんでした。

でも、この絵だけは見たくて時間が無い中、必死に探す。
確か、どっかの階段の踊り場とかそんなところにあったと思います。
ヨース・ドゥ・モンペル2世の『バベルの塔』。
アントワープの画家だそうで、ルーベンスの工房でも働いたことがあったらしい。
バベルの塔と言えば、ウィーンにあるブリューゲル(父)の作品が有名です。
いつか絶対見たい~と思っています。

バベルの塔は人間の傲慢さと愚かさの象徴。
画家それぞれが想像力を駆使して描く、永遠に完成しない塔です。
建築物好きなので、絵画の中の建物もすごく好き。
なのでバベルの塔がテーマの作品は、収蔵品にあれば絶対見ておきたいのです。
これは下から見上げる感じで、手前に建築現場が細かく描写されています。
すごく大きな絵なので迫力もありました。
塔の完成部分の細部の装飾や、レンガを焼く窯やそこで働く人々、遠くに見える港・・・
見ていてすごーく楽しい絵です。でもゆっくり見てる時間は無い。残念無念。
後ろ髪を振り切って外に出たら、ちょうど友と待ち合わせを約束した時間でした~。


北方ルネサンス好きにはたまらないベルギー王立美術館。またゆっくり見に行きたい美術館です。
次は4時間くらい見積もって行きたい・・・
by ruki_fevrier | 2012-08-13 22:53 | | Trackback | Comments(10)
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Commented by xiangpian at 2012-08-13 23:37 x
あら~ごめんなさいね、2時間半しか差し上げられないで。
ブラッセルには何度も行ってるけれど、王立もマグリッドも1度ずつ軽く40分ぐらいで(笑)のぞいただけです。
rukiさんの苦手なルーベンスの絵ぐらいしか、印象にありません。
マグリッドにあるような絵は、私まったく興味ないし。
え、rukiさんって、子供のころからダリなんかに興味があったの?
いったいどんな子供よ。ふつうはね、光GENJIとかに興味があるんだよ、子供ってのはね。
スミマセンネ、凡人で 笑
ゲントにあるファンアイクの祭壇絵、rukiさんがそんなに言うと、見たくなってきたよ~  
Commented by ruki_fevrier at 2012-08-13 23:44
xiangpianさん

あはは、いいのよー。2時間でいけると思った自分が甘かった。
予想以上に好みの絵が多いのと、細密画だから1枚に結構時間がかかったんだよね。
マグリットは、私も絵によるかな~
もともとブラックジョークみたいな絵はあまり好きじゃないし。
ダリの絵って面白いじゃない?不思議な絵で・・・
えー、変かなぁ。まぁ、変かも。
こちらこそ光GENJIに興味なくてスミマセン・・・あれは当時の常識だと後で気づいたわ。

ゲントの祭壇画、↑のマセイスの比じゃないくらい宝石キラキラの美しい絵ですよ~
修復が終わるのは数年後だろうけど、終わったら絶対行くぜ!待ってろベルギー!
Commented by desire_san at 2012-08-14 13:01
こんにちは。

ベルギーは一度行ってみたいと思っていましたので、ベルギー旅のご紹介を楽しく見せていただいています。

ベルギー王立美術館も行ってみたかったので、今回のご紹介は大変うれしいです。
ブリューゲルの珍しい傑作もたくさんみられるのですね。私はブリューゲルが好きなのでたまらないです。
ルーベンスの対策の傑作雲みりょくですね。
このブログをみせていだき、ベルギー王立美術館ほベルギーに行ったときは絶対はずせないと思いました。
ありがたいくわしいご紹介ありがとうございました。

ところで私は、世界で一番美しいまちのひとつといわれるチェスキー・クルムロフの写真をブログに載せました。ご感想などコメントいただけると嬉しいです。
Commented by ruki_fevrier at 2012-08-15 00:21
desireさん

こんばんは。
コメントありがとうございます!

ブリューゲルがお好きですか?
彼の作品はハプスブルク家が好きだったので、『バベルの塔』などの大作は
ウィーンに行ってしまっていますが、ブリュッセルにもいい絵がたくさん
ありますよ!
ルーベンスもお好きでしたらぜひ~。
一度に展示出来ないくらい収蔵しているらしいです。

>このブログをみせていだき、ベルギー王立美術館ほベルギーに行ったときは絶対はずせないと思いました。

そう思ってくださって嬉しいです。
すぐ近くにノートルダム・デュ・サブロン教会もあるので、ぜひ寄ってください!

チェスキー・クルムロフですか!チェコはまだ行ったこと無いのです。
いいですね~後でゆっくり伺いますね。
Commented by masoraly at 2012-08-26 13:59
rukiさん、こんにちは~。コメントこんなに遅くなりましたが。
ベルギーって、私、ほとんど知らなかったのですが、興味深いですね。
マセイス(って誰?)の「聖母子」素敵ですね~。その後の画家の列挙も、見てたいですねー。
ブリューゲルのこの絵、違う画家だと思ってました。
ところで、写真OKなのですね。しかも、人が写らない。
スペインプラド美術館、すごい人でした。迷宮のような建物でした。
ボスの「快楽の園」も、人でいっぱい。主人が大好きな絵になったらしく、
大きなポスターをはるばる持って帰ってきました。放置したままですが。
「バベルの塔」も、見ごたえありそうですね。
rukiさんは、ちゃんと記事にしていて、偉いなぁ・・・
Commented by ruki_fevrier at 2012-08-26 22:53
masoralyさん

こんばんは!
ベルギーの芸術、ホントに面白いですよ。
というか、私のツボにハマりまくりなのです。
マセイス、いいでしょーいいでしょー!!
ってか、この辺の絵は本当に面白いです。
カンパン、ヤン・ヴァン・アイク、ウェイデン、ボウツ、メムリンク・・・
もっともっと見たいですね。

写真はフラッシュを使用しなければOKです。
ルーブルとかもそうですね。
ウフィッツィやピッティは昔はOKでしたが、今はダメみたいです。

プラド、すごい人なのですかー。そうなんだ~。
快楽の園、じっくり見たいけど難しいかな。
大きなポスター、分かります!あれは大判で見ないと面白くないですよね。
私はボッティチェリのプリマヴェーラの大きなポスターを持ち帰りました。
額装しようと思いつつ、結局そのまま15年以上貼ってます。(笑)
バベルの塔も見たいですね~!!
あれもポスター欲しくなるかもです。(^^)
Commented by 通りすがりの者 at 2015-09-21 22:06 x
ベルギー王立美術館を検索していて辿り着きました。広範で深い知識と意欲的な生活ぶりに感嘆しながら目を通しました。
ゲントの祭壇画 についての記述がありましたので、お礼代わりと言ってはナンですが 今年9月に行ってきたばかりの最新情報を記します。
今、元々祭壇画のあった礼拝堂では実物大のレプリカが据えられ見学できます。今回ほぼ朝一番で行ったのですが、閉じた状態から開くところを見ることができました。
オリジナルは別室のガラスケースの中に、祭壇として組み上がった状態で設置されています。拝観は別に料金が発生します。開閉するスペースは充分ありましたが、見たときは開いた状態のままでした。ガラスケースの裏にも回れますので扉絵を鑑賞することは可能です。
今現在修復中の絵は白黒の写しがはめ込まれていてそれとわかります。訪ねた9月14日時点ではアダムとイブが白黒で納まっていました。
2015年発行の解説本が出ており、日本語版もありました。それによると、2017年末までには修復完了し “ 元々の” 場所で公開される予定、だとのことでした。
もう一回行こう!と思いました。
蛇足ながら、ベルギー王立美術館地下に 世紀末美術館ができていました。プランには 地下3階から8階と表示されています。王立美術館のチケットを見せれば割引価格で入場できます。
アンソール、レイセルベルへやクノップフ、デルヴィル が惜しみなく展示されていました。アールヌーヴォーの家具も、オルセーなどよりよほどよいものが展示されており、さすが発祥の地!でした。
Commented by ruki_fevrier at 2015-09-22 15:44
通りすがりの者さま

コメントありがとうございます!
ゲントの祭壇画を見に行かれたんですねーーー!!!めっちゃ羨ましいです!!
2017年末までに修復完了ですか。そうですか。
あと2年ですね。
ガラスケースに入れてある方が本来の位置より見やすかったりしますか?
それなら、一度ガラスケースにあるうちに見に行きたいなぁと今思いました。

世紀末美術館ですか。そういえば、地下は当時、クロークくらいしかなくて、なんか変な造りだなぁと思ったんですよね。
あの妙な空間は新しい美術館のスペースだったのかもしれません。
ブリュッセルが益々楽しい街になってるんですね~
やっぱりもう一度行かねば!と改めて思いました。
最新情報、ありがとうございます!!
Commented by 通りがかりの者 再び at 2015-09-23 01:19 x
お返事頂けるってうれしいですね!

ゲントの祭壇画ー“元々の”礼拝堂に置かれる時
どんな展示法になるのでしょうね。
オリジナルに近い形に置かれるのはすばらしいことですけれど‥‥
今のところはそこは自然光降り注ぐ礼拝堂です。広くはないです。
一方で現在の展示場所は遮光された暗いこれもまた広くはない部屋で、
あまり見やすいとは感じませんでした。
大きな祭壇画ですからねぇ。
見上げる形でどうしても上の段は遠くなります。
上の方は 兄の手になるものという説もありますが。
2018年より前と後、果たしてどちらがいいのか(笑)
作業が予定通りに進むかも睨みつつここは決断、でしょうか。
余談ですが、修復中の今ならば、ゲント美術館で修復作業を
(ガラス越しとはいえ) 見学できるらしいですよ。
さらに余談ですが、10年くらい前は祭壇の形をバラバラに崩して
ひとつずつ展示されていたのだそうです。


至近距離で超絶技巧を見たい気持ちを満たされたのは
ブルージュはグルーニング美術館の
《ファン・デル・パーレの聖母子》です。
ヤン・ファン・エイクの作品としては (専門家によると)
《神秘の子羊》に劣らぬ質の高さとのことですが
141×176.5 と目の高さで鑑賞できるサイズで
じーっくり見られます。
鑑賞するお客さんも ゲントのそれよりは少ないので
ゆったり鑑賞できますし。
ブルージュはメムリンクのすばらしく質の高い作品も擁しています。
北方ルネサンス好きの方々 にはたまらない街でしょうね。
Commented by ruki_fevrier at 2015-09-23 23:15
通りがかりの者さま

再度のコメント、ありがとうございます!!
おおーぅ、オリジナルの形に置かれるのは難しいかもしれませんね。
自然光が降り注ぐところだと絵が傷みますよね。
全部見れずとも、とりあえず修復中に行ってみるのはいいかもしれません。

というか、ブルージュにもすんな素晴らしい絵があったんですね。
ブルージュに行った時はお買い物メインで全然美術館のことは調べていませんでした。
くうーっ、やっぱりベルギー、楽しいですね。
もう一度ゆっくり行きたいです。
いや、ゲントの修復が終わってからも行きたいから、二度行かないと。
メムリンクもいいですよね~
あちこちの美術館が持っているので、それを見に行くのが楽しいです。
ああ、それにしてもブルージュ、なんてこと。
もっと勉強して、旅先で見落とさないようにせねばです。
色々教えてくださってありがとうございます!


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