巨匠たちの英国水彩画展@Bunkamura ザ・ミュージアム
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東京に巡回してくるのを心待ちにしていた展覧会「巨匠たちの英国水彩画展」。

英国マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵の水彩画約150点で構成されるこの展覧会。
こんなに数が多いとは思わず、見終わった後は体はぐったり・・・
でも美しい風景をたくさん見たので、心は清々しい気分でした。









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イギリスの画家といえばターナー。ターナーと言えばイギリスの風景。
10年前、ロンドンのナショナル・ギャラリーでターナーづくしの部屋に圧倒されて以来、
イギリスの巨匠といえば私の中ではターナーです。
この展覧会でももちろんターナーがいっぱいです。
第4章は「ターナー」ですし。

印象派の先駆けと言われるターナーですが、初期の作品はこんなに写実的です。
水の表現が美しい。

この絵、「旧ウェルシュ橋、シュロップシャー州シュルーズベリー」という題なのですが、手前に古い橋、アーチ越しに新しく建設中の橋が見えます。
アーチ越しに奥の風景を臨む、ってこの時もよく見ました。
当時の流行りだったのでしょうか。


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こちらは、これぞターナー、な絵。
この「ルツェルン湖の月明かり、彼方にリギ山を望む」は1841年、ターナー66歳の時の作品です。
もう風景が色に溶けてしまっています。
この絵がものすごーく素敵だった。美しかった。色が綺麗だった。
すみません、こんな乏しい表現で。
眩いばかりの月明かりの中に、自分も一緒に佇んでいるような気分になる絵です。

ジョン・ラスキンは「雲の真実の姿を描いたのはターナーただひとり」と言ったとか。
雲に限らず、自然の一瞬の真実をターナーは描いていると思います。


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展覧会は8章構成。見ても見ても終わらないという・・・
1~4章は英国水彩画発展史的な感じ。
5章がちょっと変わっていて「幻想」という主題。
ウィリアム・ブレイクをはじめとする幻想的な主題の絵が並んでいます。
この章、ブレイクがダントツ幻想的なのは間違いないのですが、このシメオン・ソロモンという画家の「律法の巻物を運ぶ」という絵も異彩を放っていました。

彼はユダヤ教徒の芸術一家に生まれユダヤ教の儀式等をテーマに描いたそうで、この絵も主題はユダヤ教の律法書です。
律法書を大事に運ぶ男性の姿、なのですが、なーんか妖しい雰囲気。
男性が妙に色っぽいのと、抱え方がやらしい。(笑)
ソロモンは同性愛者だったそうで、そのことが発覚し逮捕。
家族友人からも見放されて貧困の中で絵を描き続けながら一生を終えたとか。
この絵を描いた頃は同性愛者であることを必死に隠しながら描いていたのでしょうね。
でもバレバレな気がしなくも無い。
ソロモンが叶わぬ幻想を絵にした一枚なのかもしれません。


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ターナーの月明かりの次に好きな作品がこれです。
アンドリュー・ニコルの「北アイルランドの海岸に咲くヒナゲシとダンスール城」。
ヒナゲシだから春なのでしょうが、空はアイルランドらしく寒々しい。
だからこそ、この赤が映える。
しかし赤い花が描かれてるのに華やかさがあまり無い。

これがフランスだったらまさに百花繚乱春爛漫的に描かれるのだと思うのですが。
いや、この絵も沢山の花が描かれて賑やかです。
でも、この素っ気なく少し暗い感じの景色こそイギリス!と思った私です。


今回の展覧会で、横長のイギリスの風景、のどかな田園、好きだな~と改めて思った私。
また、いつか、イギリスのガーデン巡りの旅がしたいです。

by ruki_fevrier | 2012-11-25 22:50 | | Trackback | Comments(6)
Commented by Mueri at 2012-11-25 23:49
こんばんは~。お元気ですか?
ほんと今年は東京での展覧会が多かったですね。ここで拝見するたびに
うらやまし・・・と思ってました。(笑)
今度の木曜日にツタンカーメン展に父を連れて行きます。平日の方がすいてるし。
今日資格試験で静岡県立大に言ったら、「インカ展」の文字が。
静岡県立美術館で1月までやってるんですって。マチュピチュ発見100周年だとか。
インカは私の前世かもしれないから(笑)(以前そういわれたことが・・・)
子供のころから大好きだったマチュピチュ。これは行かねば!と行く気満々で帰ってきました。
ターナーの水彩も美しいですねぇ・・・私好みです。ターナーなんて絵具しか知りませんでした。
(しかも関係ない会社だし)
ターナーがお好きなら、指輪物語のイラストをもっとも描いているの「アラン・リー」も、rukiさんなら気に入るかも??
彼の場合は空想ですが。
私もヨーロッパ(ドイツやイギリス)の田園風景を歩いてスケッチ旅行したい。と夢見ていた時期がありました。
今では絵具の配合も忘れてますが。(爆)
写真もいいけど、絵って温度が感じられてやっぱり好きです。
Commented by ruki_fevrier at 2012-11-26 00:15
みゅえりさん

こんばんは~おひさです!
そうそう、最近面白い展覧会が多くて大変です。
スケジュールとお金が・・・(笑)そして、図録の山。
今日、やっとクローゼットを片付けて図録を仕舞う場所を作りました~

おぉ、ツタンカーメン展!私、行ってないです。
並ぶのがどうしても嫌で・・・平日でも1時間待ちとか言うし。
父が行ってきて、「金が綺麗だったぞー!」と図録を見せながら解説してくれました。
でも、実物見てないからねー。イマイチ話に乗れない。

おぉ、マチュピチュ展!いいですね。
そうそう、マチュピチュも行きたいわ~。しかし遠い。
段々人生残りわずかになってくると「いつかは来ないかも」と思うが・・・(爆)

アラン・リーさん、知らない~と思ってググったら、この人の絵、見たことありました!
おぉ、スケッチ旅行、いいですね~
18~9世紀のローマ遺跡のスケッチとか見てるとすごく憧れますね。


Commented by masoraly at 2012-11-28 19:42
rukiさん、こんばんは~。
わぁ~、素敵ですねー。私も、これ気になってました。京都で行けるかなぁ。
水彩、いいなぁ。油絵より好きです。発色が透明できれいー。
よく、こんなにきれいに保存されてますねー。
ターナー、うっとり。お部屋に飾りたい。

↓、下の個展も興味津々ですー。
刺繍なのですか。へぇぇぇ。すごいですね。
Commented by ruki_fevrier at 2012-11-29 00:21
masoralyさん

こんばんは!
水彩、いいですよね~中には油絵!?と思うようなものもありました。
グワッシュを使うとまた違った雰囲気になりますね。
水彩画の歴史も辿れる面白い展覧会でした。
ターナー、本物はやっぱりいいですね!
ほわわん、とした気分になりましたよ~
ただ、数が多くて・・・ちょっと疲れました。

↓そうなんです!!古布に刺繍したものなのですが、なんていうか、
刺繍の域を超えてます。
masoralyさん、絶対好きそう!
Commented by store-hund at 2012-12-10 02:48
はじめまして、ruki様

最後ギリギリのタイミングでこの展覧会に行ってきました。展覧会のことをネットで調べていたらruki様のブログと巡り合いました。
仰る通り、ターナーの描いたルツェルン湖の絵がすばらしいかったですね。ソロモンの絵の方はほとんどスルーしていたので、ruki様の解説・感想をよんでなるほどと思いました。風景画ばかり楽しんでいた自分が少しはずかしいです。
Commented by ruki_fevrier at 2012-12-10 22:33
store-hundさん

はじめまして!コメントありがとうございます!
展覧会つながりでいらしてくださって嬉しいです。

ターナーの月夜、本当に素晴らしかったですね~
私、あの絵の前にいつまでもいたいーと思ってしまいました。

ソロモンの絵、結構大きく、しかも異彩を放っていたのでキョーレツに印象に残っていたのです。
風景画の中にポツポツと人物画もあり、しかも水彩の歴史を辿るようにな構成で
とても楽しい展覧会でしたね!
Bunkamuraの展覧会は面白い企画が多いなぁと思います。
またよかったら遊びに来てくださいませ。私も後ほど伺います!


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